出てくる人
ヘイタン
いわゆる攻め。リュシアンの主でリュシアンを自分の部屋に呼び出して遊ぶのが数少ない楽しみ。リュシアンを愛玩生物だと思っている。
女性的な服装を好む。
リュシアン
いわゆる受け。ヘイタンに愛と恐怖と複雑な感情を抱いているが基本的には好き。怒らせると叩かれるので言いたいことはあまり言えない。
女性的な服装をさせられている。
僕は今、ご主人様の膝の上で髪を撫でられている。
「リュシアンの髪は、柔らかいな」
「……?そうですか?」
背中向きだからどんな顔でご主人様が僕に触れているのかわからない。ただなんとなく、いつもより穏やかなことはわかる。
髪をわしゃわしゃするのに満足すると僕の体をギュッと抱きしめ髪に顔を埋められる。
……かすかに伝わる吐息がくすぐったい。だからといって動いたりやめて欲しがったりしたら機嫌を損ねてしまう。どうにか耐えないと。
僕が必死に我慢してるのを知ってか知らずか、ご主人様は僕の腹を撫でる。手触りの良いツヤツヤした生地のスリップの上からもそもそと。くすぐったいというか、なんというか。ご主人様の手はヘソのくぼみをなぞり、あばらをなで、平たい胸を弧を描くようにさする。
「ひゃぅ……!」
「どうかしたのか?」
「ど、どうしたもこうしたもないですっ……!わかってて聞いてますよね……!?」
ふ、と薄く笑うとご主人様は背中向きに座っていた僕を向かい合わせになるように動かす。
「や、やだ、顔見ないで……」
「イヤらしい」
「それは……!あなたがそういう風にするから……!」
「ふぅん、それならもう触らなくていいんだな?」
「やめないで、……ください」
僕に言わせて満足したのか、ご主人様はまた僕の体を撫で回しだす。
いつもこうだ。ご主人様は僕に恥ずかしいことをさせるのを楽しんでいる。……嫌なのに、ドキドキしてしまう自分が恨めしい。
向かい合って座っているとご主人様の格好が気になってくる。レースをあしらった黒くて薄い生地のベビードールから真っ白な肌が透けて見えている。……僕に「イヤらしい」とは言うけれど、ご主人様も大概な格好をしているのではないだろうか?
いつも僕のことばかりつついてきてずるい。……僕もご主人様に触れたい。そう思って手を伸ばす。
「っ!……私のことは、触らないでいい」
「ご、ごめんなさい……」
肌に触れるや否や振り払われてしまった。本当はもっと触りたかったけれど、怒られるのは怖い。……あきらめて一方的に触られることにする。
じりじりと、気持ちいいところの核心を避けて触られ続けているようなそんな感じがする。もどかしい。もういっそめちゃくちゃにして欲しい。
僕をこんなにしたくせに、勝手にご主人様は満足して僕を膝から降ろす。
「そろそろ寝るぞ」
「……はい」
誰が聞いても不服そうな僕の声色を無視してご主人様は明かりを消す。
このままじゃとても眠れそうもない。
(明日寝不足になったらご主人様のせいだ。)
(明日寝坊してもご主人様のせいだ。)
そんな風に心の中で呪詛を吐いているうちにほとぼりも冷め、眠たくなってきた。うまく遊ばれていることに悔しさを覚えながらも意識がぼやけていく。
「それでも、ご主人様に必要とされているならいい、かな」
(完)
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