比率は等号
壁紙のダマスク模様は小さな生き物の集合体が息づくように蠢いていた。平らなはずの床はうねり覚束ない足取りに絡んでくる。壁面に手を這わせれば微細な襞が触れるような感覚。数秒後には壁の存在すら感じない。もたつく足にまとわりつく絨毯の感覚も同様に存…
文章 眩くは血の香
ひとがこいにおちるおと-B
はじめはなんか見てくるやつがいたからさぁ、少しからかってやろうと思ったんだけど。 なんかね、少しつけて行ったら勝手におかしくなっちゃったんだよねえ。まあ俺に興味持っちゃう時点でどうしようもないタイプとは思ってたけどさー、まさか勝手に幻覚見て…
文章 眩くは血の香猟奇
ひとがこいにおちるおと-A
それきりそれを見ることはもうない、というのが普通なはずなのに。それなのに、喫茶店を出て友人を合流してからもあの赤い影がチラチラとつきまとっているような気がしてしょうがなかった。ガラスの映り込み、噴水の水の反射、人混みの中に混ざる赤い髪。本当…
文章 眩くは血の香猟奇
眠るための唯一の簡単な方法
いつだったか、殺そうとしたやつに言った覚えがある。「望まれず生まれたやつが望まれて死ぬだけだ」と。許しを乞うそれを鼻で笑ってそのまま首を掻き切った。ただふと思い出しただけ。特にそいつに思い入れも感慨もない。……だったら、俺は何?あれが望まれ…
文章 眩くは血の香猟奇
面白くない話
「ああ、別に面白くもなんともない話なんだけどね」赤い髪を一つに括った彼はそのまま続けた。前に俺が人を殺す姿が何より美しいって変に慕ってくるやつがいてさ。なんか面白かったからそのまましばらく一緒にいたんだよね。こき使われてくれて便利だったし。…
文章 眩くは血の香猟奇