小夜啼吸血鬼譚

2.疑

半分の月が窓から顔を覗かせる頃、涼しい風がカーテンをゆらし吹き抜けていく。そんな景色を眺めて艷やかな黒髪のあの人は微笑んだ。あの日、両親を亡くしてからオレはあの人――咲々牙と一緒に暮らしている。遺体は見ないほうがいい、とすぐにあの人が埋葬し…

1.捧

初めて、美しいと思えるものを見た。これまで私はただ一度も心を動かされる事はなかった。そう、あのときまでは。"大いなる夜"から零れ落ちた私たちは幾百幾千も歳を重ねた。けれど、私にとってこの世界はあまりに退屈だった。同胞である姉妹はそうではない…