5.儀 【表】
窓の外の景色からは色彩が失われ、風が吹くたび枯れ木が淋しく枝を揺らしていた。この季節はどうにも好きになれない。四季の彩りを感じるようになったのはあの子と暮らし始めてからだけれども。それでもやはり過ぎゆく時間に焦燥を感じて、落ち着かなくなって…
小夜啼吸血鬼譚 文章BL,ほんのり性的
4.戯 【裏】
「咲々牙?寝ちゃったの、か?」オレの上にのしかかったまま、穏やかな寝息をたてていた。まったくもう、これじゃ動けないじゃないか。まだ触れられた感触が忘れられないでいるオレの気も知らずに一人だけ寝るなんて、ずるい。でも、咲々牙はそんな人だってよ…
小夜啼吸血鬼譚 文章BL
4.戯 【表】
すっかり日も落ちて、窓から細い弧を描く月が覗く頃。「ねえ、さつきの思う『えっちなこと』ってどのくらいのことなの?」「し、知らないっ!」いつかの避けられていた原因のことを今日もさつきに問うてみる。しかしながら、答えてくれるつもりはないみたい。…
小夜啼吸血鬼譚 文章BL,ほんのり性的
想い出星をさがして
いつか昔に聞いたおとぎ話。年の終わりには人々の思い出からこぼれ落ちた星が降り、その星に祈れば願いが叶う、と。誰に伝えられたかもわかりませんが、わたしはそれを知っていました。◆◆◆無数の本の山と数本のペンと白紙のノートが置かれた机。その中に一…
文章 白昼夢
ひとがこいにおちるおと-B
はじめはなんか見てくるやつがいたからさぁ、少しからかってやろうと思ったんだけど。 なんかね、少しつけて行ったら勝手におかしくなっちゃったんだよねえ。まあ俺に興味持っちゃう時点でどうしようもないタイプとは思ってたけどさー、まさか勝手に幻覚見て…
文章 眩くは血の香猟奇
ひとがこいにおちるおと-A
それきりそれを見ることはもうない、というのが普通なはずなのに。それなのに、喫茶店を出て友人を合流してからもあの赤い影がチラチラとつきまとっているような気がしてしょうがなかった。ガラスの映り込み、噴水の水の反射、人混みの中に混ざる赤い髪。本当…
文章 眩くは血の香猟奇
3.欺
さつきと暮らすようになって、すべてがうまく行っていると思っていた。外を歩けばすべてが鮮やかで新鮮に思えて。幾百も眺めてきた季節の移り変わりだってまったく新しいことのようにさえ感じた。あの子が隣にいるだけで、笑ってくれているだけで、こんなにも…
小夜啼吸血鬼譚 文章
2.疑
半分の月が窓から顔を覗かせる頃、涼しい風がカーテンをゆらし吹き抜けていく。そんな景色を眺めて艷やかな黒髪のあの人は微笑んだ。あの日、両親を亡くしてからオレはあの人――咲々牙と一緒に暮らしている。遺体は見ないほうがいい、とすぐにあの人が埋葬し…
小夜啼吸血鬼譚 文章BL
白の灰
古ぼけた埃塗れの狭い部屋。薄闇の中に■■と□□だけ。薄汚れてなお鈍い光を放つ柔らかな絹のような髪。病的なまでに白い肌。そのまぶたは閉ざされ、■■を見ることはない。暗闇の中でもその白はより一層際立って見えた。壁にもたれた□□は動かないまま。生…
文章 白昼夢
眠るための唯一の簡単な方法
いつだったか、殺そうとしたやつに言った覚えがある。「望まれず生まれたやつが望まれて死ぬだけだ」と。許しを乞うそれを鼻で笑ってそのまま首を掻き切った。ただふと思い出しただけ。特にそいつに思い入れも感慨もない。……だったら、俺は何?あれが望まれ…
文章 眩くは血の香猟奇
誰かの日記
2/16今日は何もなかった。アナベルに睨まれたような気がした。あの二人はよくわからない。少し怖い。2/17あの人が地方へ演説しに行くらしい。食料として僕は連れて行かれるようだ。ヅゥリンは留守番だと伝えられ不満げな顔をしていた。2/18馬車は…
ヘイタン×リュシアン 文章BL
面白くない話
「ああ、別に面白くもなんともない話なんだけどね」赤い髪を一つに括った彼はそのまま続けた。前に俺が人を殺す姿が何より美しいって変に慕ってくるやつがいてさ。なんか面白かったからそのまましばらく一緒にいたんだよね。こき使われてくれて便利だったし。…
文章 眩くは血の香猟奇